とても素敵な映画館で、シネフィルを唸らせそうなつくりと、可愛らしい、愛着の湧く場所。
そこには、なんと、大森一樹監督の姿も!
以前、あるお仕事でチラッとだけご挨拶したことがあっただけだったので、僕のことなんか覚えてらっしゃらないかなと思っていると、大森監督から声をかけて下さり、覚えていてくださいました。
『君、あんなクラッシュシーン、
ようやったなあ。車何台潰した?さすがプロやな』
と、大変な撮影だったことを労って下さり、褒めていただきました。
嬉しかった…
その後、皆で打ち上げに。
飲み屋でお酒が入るとそれぞれ本音トークに。
そこで改めて大森監督に挨拶すると、
『お前、あんなにナイターばっかりやったらあかんで。あのシーンとあのシーンはデイでもできる』
と、かなり具体的に、プロの監督のすべきことをしっかり教えていただき、気づいたら正座。
肩をいからせ、緊張してまだ何か教えてもらえるかなと目をじっと見ていると、
『もうええわ』
と(笑)
以前、ずっとお仕事でお世話になっている佐々部清監督にも、スタッフに負担がかからないよう計算し、予算を収めてこそプロの監督だ、と教えていただきました。
プロとして、正にそこが重要で、それを守った上でクリエイティビティを発揮するのがプロである、と実感が更に強いものになりました。
そして、僕は、税金で撮らせてもらい、プロのスタッフでしっかりとやらせてもらう上での責任がまだ果たせていなかったことに気づかされました。
現場中にも、スタッフに大変な苦労をかけているのは、重々知っていたし、睡眠時間もほとんど取れない日も続いているのも知っていました。
その時に、僕が一番してはならないと思ったことは、妥協して言い訳をすること。
自分で書いて、あれだけのことを敢えてやろうと思いました。
しかし、並大抵のことでは実現できない。
予算も限られている、時間もない。
スタッフにはハードな撮影を強いるであろうことは予想できていました。
問題は、自分の計算の甘さ。
やはり、思っていたことが、自分の予想以上に時間がかかる。
スタッフは一流だし、かなり仕事の早い人たち。
それで、現場中にカットをかなり減らして整理しましたが、それでもアクションとテンポを成立させるためには減らすにも限界がある。
時間はどんどん押し、スタッフも疲労困憊、しかし、誰一人として文句を言わない。
それどころか、むしろ生き生きと明るく仕事をしてくれる。
僕のすべきことは、そこでいかにもっと面白くできるか、もっと自分のやりたいことを実現に結びつけるためにスタッフにどう伝えるか、いかに妥協しないか。
僕はまだ決して本物のプロの監督には及ばない…
しかし、一番大切なのは、やりたいと純粋に感じて書いたこと、頭に思い描いたことをしっかりと筋を通してやり切ること。
それは、自主であろうがプロであろうが、関係ない。
色々と口を出されても何を言われても、妥協せず、やり切ること。
自分が心の底からほんとうに素敵だと思っていることを見つけ出し、それを必ず実現すること。
そして、それをスタッフ、キャストという、素晴らしい仲間たちと共有し、分かち合うこと。
そう、『ロックアウト』の時のように。
まず、監督として、一番大切なことに改めて気づきました。
『曇天クラッシュ』では、皆に大変苦労をおかけしましたが、素晴らしい作品になりました。
それは、スタッフ、キャストの皆さんが体を張って僕を守ってくれ、気持ちを込めて精一杯頑張ってくれたからです。
僕のこれからすべきことは、その分、次なるステップに行くことです。
もう一度、原点に帰り、作品に、自分自身に向き合う時が来たのだと思います。
AKB総選挙が社会現象になり、全国の映画館がそのモニター会場となった、6/8。
その会場の一つである、お台場メディアージュでの上映を以って、全てのオフィシャル上映が終わりました。
また新たな出発です。